■ 彼女の激励と内助がなかったら..
牧野先生の植物一筋の人生には
何人もの支援者がいたそうです。
その一番は
経済的な苦しさの中で
先生を励まし
内助の功を尽くされた夫人でした。
牧野先生は笹の新種に
婦人の名前をとって
「すえこざさ」と名づけました。
「私が終生植物の研究に
身を委ねることの出来たのは
何といっても、亡妻寿衛子(すえこ)の
お蔭が多分にあり、
彼女のこの大きな激励と内助がなかったら、
私は困難な生活の上で
行き詰まって仕舞ったか、
あるいは止むを得ず
商売換えでもしていたかも知れませんが、
今日思い返して見ても
よくもあんな貧乏生活の中で
専ら植物にのみ熱中して
研究ができたものだと、
われながら不思議になることがあります。
それほど妻は私に尽くしてくれたのです。
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寿衛子は平常、私のことを
”まるで道楽息子を一人抱えているようだ”と
よく冗談にいっていましたが、
それはほんとうに
内心そう思っていたのでしょう」
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(『牧野富太郎 植物博士の人生図鑑』平凡社より)