グラストンベリー──聖なる水と、風の丘で
ヒーリングハーブス社を訪れたあとは、
イングランドとウェールズの境にある町、
ヘリフォードへ。
ここはかつて、ウェールズとの戦いで
イングランド軍の最前線だった場所です。
大聖堂には、ジュリアン・バーナード氏の著書
『水のパターン』にも登場する、
中世の世界地図〈マッパ・ムンディ〉が収められており、
閉館ぎりぎりに駆け込んで展示を見学しました。
その後、地元の食材を買い込み、Mさんのお宅へ。
みんなで作った手料理を囲みながら、
これまでの旅の感動を語り合いました。
受け取った気づきや感想、
フラワーエッセンスの話は尽きることなく、
高揚感と安らぎの混じった、
心温まる夜を過ごしました。
<チャリス・ウェルと、トーの丘で>
そして翌朝、いよいよグラストンベリーへ。
この地は〈レイライン〉と呼ばれる
大地のエネルギーの通り道の上にあり、
古くから聖地として知られています。
そのレイラインは、
グラストンベリーから西へ約200km、
海を望む聖なる島、
セント・マイケルズ・マウントまで
続いていると言われます。
その起点とされるグラストンベリーは、
ケルトの伝説が息づき、
聖なる泉が湧き出る場所。
世界中から巡礼者や旅人が訪れる、
特別な土地——いわゆる「パワースポット」です。
(あの世界的な音楽フェスティバルの場所としても
有名ですね。)
私たちは、〈チャリス・ウェル〉という
泉の湧くガーデンの敷地内にある
宿泊施設に2泊しました。
ここには鉄分を多く含む赤い水、
〈レッド・スプリング〉が静かに流れています。
敷地のすぐ横には
〈ホワイト・スプリング〉と呼ばれる泉もあり、
こちらは誰でも水を汲むことができます。
観光客も地元の人も絶え間なく訪れ、
横にある洞窟のような祈りの空間では
キャンドルが灯され、
静かに祈る人、沐浴する人の姿が印象的でした。
その場には、「聖なる水の力」だけでなく、
人の祈りや意識、思いのようなものが
静かに満ちているように感じました。
それはまさに、バッチ博士が
〈ロック・ウォーター〉のレメディに
ふさわしい水について記されたことや、
ジュリアン・バーナード氏が
考察された“水の受容性”を、
身体を通して実感するような体験でした。
ホワイト・スプリングの脇の小道を登ると、
〈トー(Tor)〉と呼ばれる丘の上に出ます。
頂には、かつて聖ミカエル教会があった塔が
ぽつんと残されていました。
私たちはこの丘に、滞在中3度登りました。
個人的な感想になりますが、
吹き抜ける風の中、ただ景色を見渡していると、
心が静まり、呼吸が深くなっていきます。
どこか遠い記憶が呼び覚まされるような感覚──
「これでいい」と、すべてを受けとめられるような、
深く力強い受容の感覚が広がっていきました。
空も、大地も、人も、そこに根を張る植物たちも、
すべてがひとつであるということ。
それが理屈ではなく、心とからだ、
自分という存在そのものを通して、
湧き上がってくるような、不思議な体感でした。
<グラストンベリー修道院跡にて>
もうひとつ強く印象に残っているのが、
町の中心にある〈グラストンベリー修道院跡〉です。
この修道院は、伝説の「アーサー王の墓」があると
伝えられ、
ヘンリー8世によって破壊された歴史を持つ場所です。
私自身はそれまで特別アーサー王伝説に
惹かれていたわけではありませんでしたが、
「王の墓」と言われる場所の前に立ったとき、
なぜか、バッチ博士のお墓の前に
座ったときと同じような感覚を覚えました。
深く呼吸ができて、
遠い記憶とつながるような、
静かで懐かしい感覚……。
広い敷地に残された石壁を巡るたびに、
身体の奥深くから、
静かな喜びがじんわりと
湧き上がってくるような
不思議な体験でした。
「過去世の記憶」かどうかは
わかりませんが、
魂のどこかで知っている場所に
還ってきたような、
そんな感覚でした。
ちょうど見学中に強い雨が降り出し、
私たちは敷地の端に立っていた
大きな木の下で雨宿りをしました。
この木の下で過ごすうちに、
木が放つ生命力に包まれ、
深い癒しと「復活の力」を
与えられたように感じました。
それがホーンビームの木だったと
気づいたのは、
しばらく経ってからのこと。
これまで少し印象の薄かった
レメディの植物から、
生き生きとした本来の力に
触れられたことが、
心から嬉しく思えました。
また、敷地の外れには
クラブ・アップルの
果樹園もありました。
アップルは
トーの丘の麓にも、
調和の祈りを込めて
円形に植えられた若木があり、
チャリス・ウェルのガーデンでも、
枯れた幹から力強く若枝を伸ばして
たくさんの実をつけた
老木に出会いました。
グラストンベリーでは、
大地の力を受けとり、
風を感じて、光を浴び、
泉から滋養を得る──
そのすべてを通して、
自然の力を全身で
感じ取ることができたように思います。
この体験は、
旅の終盤にふさわしい、
豊かで意味深い時間でした。
それまでの旅での出会いや出来事が、
ひとつにつながっていくような感覚。
旅が最後に近づくにつれ、
断片がまとまり、
心の奥底にある「何か」と
出会っているような気がしました。
帰国して3週間以上が経った今も、
その感覚はまだ体のどこかで息づき、
今もなお旅は続いているように感じています。
<樹木とともに受け取ったもの>
グラストンベリーは、
自然界のエレメント
──光(火)・水・大地・風の気が、
力強く満ちていました。
出会った植物たちも、
その自然の力を存分に受け取り、
自然とひとつになって、
堂々と生きているように見えました。
オーク、ビーチ、ホーンビーム、ホリー、
ウォールナット、クラブ・アップル、
ホワイト・チェストナット……
バッチフラワーの樹木以外にも
トネリコやイチイをはじめ、
たくさんの木々に出会いました。
その出会いを通して、
ケルトの人々が
なぜ木々を守護樹として大切にし、
清めや守りを託してきたのか。
その理由を、このグラストンベリーで、
身体を通して理解できたように感じています。
私たちはこの後、旅の最後の滞在地・ロンドンへ。
帰国を意識しながらも、植物たちからの贈り物は、
静かに心の中に響いていました。
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